世界年表
神代〜中世(年代不詳〜1600年代)
怪異と神の区別が存在しない時代。人々は自然の脅威・疫病・災害の全てを霊的な存在の意志として解釈した。恐れと信仰が渾然一体となっており、怪異と神は同じ言葉で呼ばれていた。
各地で怪異との対話・交渉・封印の技術が独自に発展する。文字による記録が始まる前から口承で受け継がれてきた技術がこの時代に基盤を作った。現在の祓部が持つ知識の一部はこの時代に遡る。
最初の禁足地が各地に生まれる。人々が自然に避けるようになった土地であり専門家が封印と監視を引き受ける慣習が成立した。現在も封印が維持されている禁足地の中にはこの時代に遡るものがある。
怪異の記録が文書化され始める。この文書群が現在の祓部データベースの原型になる。
怪異の大規模発生が複数回記録される。疫病・戦乱・飢饉が噂の密度を高め、かつてない規模の怪異が各地に出現した。専門家の力だけでは対処しきれない案件が増加した時代だ。
古い都市伝説型怪異の多くがこの時代に確立したと推定されている。現在も循環型として繰り返し出現する怪異の原型がここで生まれた。民俗学的な記録にこの時代の痕跡を持つ怪異は特に強力だ。
社会の安定化とともに怪異の大規模発生が減少する。各地の神社が怪異の監視拠点として機能し始める。
近代への転換(1700年代〜1900年代)
魔力の存在が初めて学術的に記録される。長年の経験則として扱われてきた「世界を書き換える感覚」が、自然哲学の文脈で研究対象になり始める。
魔力の存在が実証される。魔法がチートコードであるという基本原理がこの時代に解明される。経験的知識と近代科学が接続され始めた転換点だ。
最初の大規模魔法実験が実施される。実験は成功したが実験施設周辺に記録上初めての「実験由来怪異」が発生した。魔法と怪異の発生が表裏一体であるという事実の最初の記録だ。公式記録には別の原因として処理された。
魔法の軍事利用が試みられる。大規模な魔法使用が怪異を生むという副作用がこの時代に広く認識される。
鵺ヶ原事変
近代初の大規模怪異事件として記録されている。急速な都市化と近代化への不安が集合的な信念として臨界を超え、旧市街地一帯に特級相当の怪異が出現した。当時の技術では対処不能であり専門家集団が緊急招集されて封印処理が行われた。被害規模と怪異の詳細は現在も最高機密として封印されている。鵺ヶ原の地名は現在の地図に存在しない。後の魔法安全基準制定のきっかけになった重要事変だ。
最初の魔法安全基準が制定される。鵺ヶ原事変と軍事利用による複数の怪異発生事故が引き金になった。
魔導具の製造技術が確立される。素養のない人間でも魔法に近い効果を得られるようになり魔法の民間普及への道が開かれる。国家系企業の筆頭として**蒼鉄機工**が設立される。後に東管区の鉄嶺に主要工場群を展開する。
魔導具が一般家庭に普及し始める。照明・通信・医療補助への応用が進む。同時に魔導具事故による小規模怪異が都市部で頻発するようになる。
白鴉事件
灰嶺市の地下工事中に封印されていた古い怪異の核が偶発的に破損した事件だ。解放された怪異は一級甲種相当であり工事関係者と周辺住民に多数の被害が出た。公式発表はガス管爆発事故だ。現在の地下開発プロトコルの原型がこの事件から生まれた。
戦時中の大規模魔法使用により複数の大型怪異が発生する。戦後の混乱期に怪異への対処が社会問題化する。
終戦後怪異爆発期
戦争による大規模な死と恐怖・悲嘆が集合的な信念として爆発的に拡散した時期だ。各地で新旧の怪異が同時多発的に発生した。この時期に現れた怪異の中には現在も循環型として繰り返し出現するものが複数ある。対処が追いつかず封印処理で凌いだケースが多い。この経験が後の三段階討伐プロセスの原型を生んだ。
魔導省が設立される。怪異対処の専門部隊として祓部が組織される。
討伐用機動兵器の原型開発開始
終戦後怪異爆発期の経験から大型怪異への対処手段として機動兵器の研究が始まる。当初は既存の軍用車両に魔導具を搭載した改造型だった。蒼鉄機工が国家から研究開発を受注した最初のケースであり鉄嶺工業圏の原型がここから始まる。
魔法インフラの整備が都市部を中心に急速に進む。魔法動力を使った交通・通信・医療が普及し始める。魔法のない生活が想像しにくい世代が初めて生まれた時代だ。
素養検査制度が国家レベルで導入される。独立系の魔導具企業が急成長し国家系企業との競合が始まる。
雷禽重工の設立
西管区の雷ノ湊に独立系魔導具製造企業として設立される。蒼鉄機工が安全基準重視の保守的な設計を取る一方、高出力・高リスクの尖った設計で差別化した。この二社の競争が現在の魔導具産業の基盤を作った。傭兵集団との関係が最も深い企業だ。
第一次機動兵器実戦投入
四級甲種の大型怪異への対処に初めて討伐用機動兵器が実戦投入された。怪異の討伐には成功したが機体の大規模魔導具稼働による副次的怪異が周辺に三件発生した。戦闘後の周辺監視プロトコルはこの経験から生まれた。
魔法がガスや電気と同等のインフラとして法的に位置づけられる。資格制度と安全基準が現在に近い形に整備される。
御霊崩し事件
長年にわたって地域の守り神として信仰されてきた神社の御神体が、再開発による神社の取り壊しを機に怪異化した事件だ。神が怪異に転換した事例として討伐者の間で語られている。転換した怪異は通常の討伐手段が通じにくく専門的な封印処理が行われた。再開発と信仰の喪失が怪異を生む可能性を示した事例だ。
インターネットの普及と怪異の関係が初めて記録される。情報の拡散速度が上がったことで新しい怪異の発生頻度と強度が増加した。祓部のデータベースに「新型怪異」のカテゴリが追加される。
深夜廻り怪異の初出記録
インターネット上で広まった都市伝説から発生した最初の記録的な新型怪異だ。従来の民俗学的知識では対処できず「インターネット発生源怪異専用の調査・解明プロセス」が策定されるきっかけになった。この怪異は現在も循環型として断続的に出現しており信念密度は二級相当まで成長している。
現代前夜(2000年代〜2050年代)
SNSの普及が新しい怪異の発生を加速させる。都市伝説がリアルタイムで拡散するようになり新型怪異の発生件数が急増する。祓部の対処能力が限界に近づく。
拡散型怪異事案
SNSで爆発的に拡散した都市伝説から発生した怪異が、初めて単一国家の対処能力を超える規模に成長した事例だ。情報の拡散速度が怪異の成長速度に直結することが初めて数値として記録された。複数機関の連携プロトコルが整備されるきっかけになった。公式発表は広域感染症の誤報として処理された。
雷禽重工の次世代機動兵器プロジェクト始動
パイロットの素養と機体を直接同調させる新世代の戦闘用搭乗型の開発が始まる。蒼鉄機工との技術競争が激化した時代だ。パイロットへの負荷が従来型より大幅に増加することが当初から問題視されていたという情報がある。
独立系企業の技術革新が加速する。国家の安全基準を逸脱した高性能魔導具が市場に流通し始める。傭兵が現在の形に近い集団・個人として各地に現れる。
霧島事案
傭兵集団が祓部より先に大規模怪異の情報を掴み独自に討伐した事案だ。討伐自体は成功したが無許可での高出力魔導具使用により周辺に複数の新型怪異が発生した。祓部と傭兵集団の管轄争いが表面化した最初の大規模事案だ。暫定的な規制フレームワークが策定されたが抜け穴が多く実効性は低い。
出自不明の特殊な魔導具が闇市場で初確認
製造者不明の特殊な素材を組み込んだ武装型が闇市場で初めて確認された。使用者への何らかの代償が確認されたという情報があるが詳細は不明だ。製造者と流通経路は現在も特定されていない。
蒼鉄機工・全装身型プロトタイプ事故
鉄嶺工業圏の試験場で次世代全装身型の試験中にパイロットと機体の同調が暴走した事故だ。試験施設が全壊し関係者に複数の死傷者が出た。同調暴走によって施設周辺に二級相当の怪異が発生した。この事故を機に全装身型の開発基準が大幅に強化された。
出自不明の特殊な魔導具が闇市場に複数流通し始める。製造者が複数存在することが確認される。
素養持ち子供の連続失踪事件
複数の都市で素養検査を受けた直後の子供が相次いで失踪する事件が発生した。国家の育成施設への収容でも企業の引き抜きでもない第三の経路の存在が示唆された。素養持ちの子供を狙った何者かが社会に潜んでいるという認識が討伐者コミュニティに広まった。謎の組織との関連が疑われているが証拠は不明だ。
第一次怪異兵器使用事案
謎の組織が灰嶺市で怪異を意図的に放流したとされる事案だ。三級乙種の怪異が繁華街に放たれ複数の被害者が出た。公式発表は原因不明の集団パニックだ。怪異を意図的に兵器として使う組織の存在を討伐者コミュニティに強く印象づけた事案だ。詳細は祓部が情報を管理しているため不明な点が多い。
雷禽重工の次世代機完成
パイロットの素養と機体を直接同調させる戦闘用搭乗型が完成した。従来型の三倍以上の対怪異性能を持つ。傭兵集団への供給が開始された。パイロットへの長期的な影響については情報が錯綜している。
白銀の廃線事件
北管区・凍月嶺の山間を走る廃線になった鉄道路線全体に定着型の怪異が発生した大規模事案だ。特級相当の存在強度を持ちながら丙種という異例の組み合わせだった。祓部・傭兵・無所属が同時期に現場入りし三者が初めて本格的に協力して封印処理を行った事例だ。封印は現在も維持されており定期的な状態確認が続いている。この事案で協力した討伐者たちの一部が現在の無所属コミュニティの核になっている。
機動兵器と怪異の相互作用事案
大型の戦闘用搭乗型が三級甲種の怪異と長時間交戦した結果、機体の魔導具システムが怪異のルールに干渉されて暴走した最初の記録事例だ。機体が制御不能になり新たな怪異を生みながら都市部を移動した。最終的に無所属の討伐者が機体のコアを破壊することで収束した。機動兵器が怪異と化す可能性を示した事案として討伐者の間で語り継がれている。
謎の組織が表向きの宗教法人を設立したとされる時期だ。「あなたの体験は本物だ」という言葉で怪異の被害者や社会から疎外された人間を集め始めたという情報がある。
謎の組織の活動が規模から質へ転換したという情報がある。都市部で原因不明の大型怪異発生が増加している時期と重なる。詳細は不明だ。
現在(2080〜2100年代)
複数の大型怪異発生事案に謎の組織の関与が疑われる。祓部・傭兵・無所属が同じ現場で鉢合わせする事案が増加し三者の関係が複雑化し始める。
黒霧の夜
単一の新型怪異が発生から72時間以内に三級甲種広域複合型まで成長した記録的事案だ。SNSの拡散速度が怪異の成長速度を数倍に加速させた最初の事例として記録されている。祓部・傭兵・無所属の三者が初めて正式な情報共有協定を結ぶきっかけになった。協定は現在も形式上維持されているが実態は形骸化している。
御神楽事変
長年にわたって封印管理されていた特級丁種の封印が何者かによって意図的に解除された事案だ。解除直後に怪異は甲種への転換を示す行動を開始した。封印の再設置に祓部の大規模部隊が投入され甚大な損害が出た。この事案以降祓部の人員と資源が著しく減少している。誰が封印を解除したのかは現在も不明だ。
これまでに記録されたことのない規模の怪異が複数発生する。自然発生か何者かの関与かの判定が困難なケースが増加している。祓部が動ける案件の上限に近づきつつあるという話が討伐者コミュニティに流れている。
機動兵器の怪異化事案
長期運用された戦闘用搭乗型の魔導具コアが怪異化した最初の確認事例だ。機体は自律的に動き始め周辺に複数の怪異を生みながら移動した。無所属討伐者の介入によって収束したが機体の残骸は回収されていない。詳細は祓部が情報を管理しており不明な点が多い。
物語はここから始まる。
年表に空白があるとすれば、そこに何かが隠れている可能性がある。